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序文
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人類という種がこの世に生まれてから、一体どれだけの時が過ぎたのだろうか。すでに我々の生誕の地、聖地エレスに関する記録は古き文献の伝説の中にしか残ってはいない。その答えを出すことは今となってはほぼ不可能に近いだろう。それほどの永い永い時を経て、我々人類は何処で足を踏み外してしまったのか。
もっとも、この世に生まれついた生物に明確な道や目標があるのかは分からない。しかし少なくとも、人類を含めて全ての生物には、種の保存という本能が備わっているのは確かだろう。そして、その本能から成り立つ生態系という絶対的な束縛を、「ヒト」という種は科学という剣で断ち切り、他の生物をその私利私欲で絶滅に追い込んできた。そのあげく、母なる星エレスまで捨て去ってきた我々は、本当に正しい道を歩んできたと言えるのだろうか?
私は、それもあるべき姿なのではないかと思っている。人類もまた、今の我々の様に、「増え過ぎた種は滅びへ向かう」という自然の摂理に従っているのだから。
先の大戦によって、人類は地下都市に逃れたほんの一握りしか生き残っていないとされている。一世紀半ほど前に起きたそれは、灼熱の炎によってそれこそ全てを焼き払った。消し去ったと言ってもいい。自然と都市が調和していた地上は、土壌汚染によって数百年に渡って緑を追放することを義務付けられた。多くの生命を育んできた海は、灰によって埋め尽くされ、内に生命を宿す能力を失った。数々の航空機と様々な鳥たちが飛び交った空は、ただ砂に濁った風を運ぶだけとなった。
将来、この都市の人々がそのような地上へと戻ることができるのか私には分からない。正直、この数百人程度の人々が、岩と砂漠だけの不毛の地となった地上へと戻ることは不可能ではないかと思っている。
しかし私は、次の世代に未来へと繋がる情報を伝えるため、それが叶わなければ我々の生きた証を次の種へと示すために、この記録を遺したいと思う。
一人の研究者の欲求として。
そして、一人の人間の我儘として。
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